フィリピン訪問記

司祭 ヨハネ 芳我秀一

 私はフィリピンと聞くとバナナか、あるいは20年前に起きた打倒マルコスの革命程度のことしか頭に浮かびませんでした。それ程無知であったということです。しかし、今度、初めてフィリピンの地を踏み、現地の人々と交流する中で様々の学びが与えられたことは私にとってとても意味あることでした。
 去る7月18日(月)から22日(金)にかけて、中村教区主教に同伴してフィリピンを訪問する機会が与えられました。18日(月)朝、関西空港より出発して、約4時間後にマニラ空港に到着。フィリピンと日本の時差は一時間。高温多湿でかなり蒸し暑いとはいえ、日本とあまり変わらないように感じました。空港では、ケソンシティーにある聖公会関係のトリニティー大学の職員イルミナデ女史が出迎えて下さり、同大学の専用車でホテルまで送って頂き、その夜には同大学学長主催による夕食会が開かれ歓迎して下さいました。


 さて、19日(火)は早速マニラから北東に位置するサンバレス州ラウイン村に建設された図書館を見学に行きました。マニラからラウイン村まで車で約4時間かかります。この地方には1991年に大噴火したビナツボ火山があり、この時に降った膨大な火山灰があたり一帯を覆い尽くしたために人々は生活基盤を失い、そしてラウイン村まで降りてこられたとのことでした。ですからその地域に住む人々はとても苦しい生活を余儀なくされています。そのような時に、この地域に関わりをもつトリニティー大学ではこの地の人々のために様々な援助活動を行っています。大震災で被害を受けて多くの人々から援助をいただいた当教会もこの地域と人々のため、図書館建築のためにチャリティー・コンサートやバザーを開いて図書館のために募金をして、昨年、その完成を見ることが出来たのです。図書館は一階平屋建てで土間はコンクリートです。さらにパソコン2台が設置されています。



また側には小学校があって約100名の子供たちがこの図書館を利用しながら学んでいます。今回の訪問では校長先生はじめ教職員の皆さんと親睦を深めることができ、また子供たちとも親しく接することが出来て感謝でした。




小学校の周辺には藁葺きの家が数軒建っていましたが、どれも電気やガスもないようなみすぼらしい木造の建物です。でも子供たちはそのような家で生活しながらも学校では仲間たちと元気に楽しく過ごしていました。校舎の壁に次のような言葉が英語で書かれていました。「あなたは教師であることに誇りをもちなさい。未来はあなたにかかっている。」この村の人々の意気込みがよく伝わってきます。ですから、子供たちをはじめこの地域の人々のために図書館が果たす役割はとても大きいと感じました。また、この村の人々を見ていると、現在、物質的に恵まれた日本人が忘れかけている大切なものを強く感じます。たとえば「命の尊厳」、「未来への希望」といったものです。ですからお互いの理解を深め、自らのあり方を問い直すためにも、この地域の人々とのつながりを大切にしていきたいという思いを強く持ちました。
ラウイン村で3時間程滞在した後、再び専用車でかつてアメリカ軍の基地のあったスービックまで引き返してホテルで一泊してから、翌日ケソンシティーに帰りました。

 21日(木)は朝からマニラ南西にあるドミニコ修道会の「カレルエガ」と呼ばれる祈りの家を訪問しました。将来、教役者を訓練するための施設として相応しいかどうか直接見聞するためです。地理的には自動車で3時間ほどかかりますが、施設も環境もすばらしい所でした。

 同日午後3時にはケソンシティーに帰り、フィリピン聖公会中央教区のタクロバオ主教を訪問しました。目的はフィリピン聖公会、トリニティー大学との宣教協働問題について協議するためでした。会議には司祭であるタクロバオ主教夫人と管区大聖堂主任牧師のジョエル司祭も同伴されて、お互いの情報交換をしながら話がはずみました。
その後、タクロバオ主教主催の夕食会に招かれ親睦を深めることができ感謝でした。


 全ての日程を無事に終了して22日(金)午後の飛行機で関西空港に帰ってきました。今回の旅行のために支えて下さり、祈りに覚えて下さった皆さんに心よりお礼申し上げます。


© 2001 the Cathedral Church of St.Michael diocese of kobe nippon sei ko kai