大聖堂訪問記V

司祭 ヨハネ 芳我秀一

主のご復活を感謝します!
  大聖堂訪問の旅もベルギー国ブリュージュの街を後にしながら、バスで一路南下してフランスに入りました。EU(欧州連合)内は国境を越える時、何の手続きも要りません。それだけお互いの国々が信頼し合っているということでしょうか。
  さてフランスは国土が日本の約1.5倍で、人口は約六千万人です。車窓からは果てしなく続く大地と草をはむ家畜などのどかな田舎風景が続きます。やがて目の前に広がってくるのがフランス北部・ピカルディー地方の街アミアンでした。そして街の中央にそびえ立つのがアミアンの大聖堂です。この大聖堂はゴシック建築の傑作と云われ、1220年に着工、主要部分は1288年に完成しています。奥行きは約145m、天上までの高さは約42mで聖堂内は千人以上を収容することができます。

〈石の百科全書〉
  この大聖堂の特徴は西正面扉口周辺を埋め尽くす彫刻群です。ここにはキリスト教の教義や聖人伝、天地創造をはじめとする旧約聖書の物語、生活の様々な場面での「美徳と悪徳」を見る人が誰でも理解できるように分かり易く浮き彫りにした彫刻群で「石の百科全書」と呼ばれています。当時は一般庶民は文字を読むことが出来なかっただけに貴重な信仰に関わる教科書であったということです。そしてこれらの彫刻群は、見る者に、今にも語りかけて来るような生き生きとした生命力を感じさせてくれるのです。

〈キリストとの出会い〉
  十字架刑の後、死から復活されたキリストは、家の戸に鍵をかけて閉じこもっていた弟子たちの真ん中に立たれ、傷付いた手とわき腹を見せながら「あなたがたに平和があるように。」と云われました。弟子たちは復活したキリストに出会って、キリストが自分たちの裏切りの罪を赦してくださり、変わることなく自分たちを愛しておられることを知らされた時どれ程嬉しかったことでしょう。ところが弟子のトマスは疑い深い男でイエスの復活を信じませんでしたが、二回目にキリストが弟子たちに出会ったとき、トマスに次のように云われました。「あなたの指をここに当てて、わたしの手を見なさい。また、あなたの手を伸ばし、わたしのわき腹に入れなさい。信じない者ではなく、信じる者になりなさい。」(ヨハネ伝20:27)と。その結果、トマスは信じる者に変えられます。このヨハネの記事はAD90年代に書かれたのですが、当時はローマ帝国によるキリスト教徒への迫害が激しくなって多くの信仰の仲間たちが傷つけられて死んでいったのです。その傷付いた体を著者のヨハネや彼の弟子たちは見ていたのではないでしょうか。そして仲間の傷跡を見るうちに、彼らはその背後で私たちのために十字架で堪え忍ばれたキリストの生きた言葉を聞いたのではないでしょうか。

〈キリストの代弁者〉
 このように人がキリストと出会うためにはキリストの声を代弁する者が必要です。先述のアミアンの大聖堂はまさに復活のキリストの代弁者でありました。おびただしい数の彫刻群は人々に生きたキリストの声として語りかけてきます。復活の主は弟子たちに云われました。「あなたがたに平和があるように。父がわたしをお遣わしになったように、わたしもあなたがたを遣わす。」と。神は現代に生きる私たちにもキリストの声を人々に宣べ伝える者であることを求めておられると言うことです。 


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