「天にある大きな報酬」

司祭 ヨハネ 芳我秀一

 10月31日と云えば「ハロイン(Halloween)」です。日本人にはあまり馴染みのない行事ですが、キリスト教と深い関わりのある行事です。お隣りの神戸昇天教会では毎年この季節になると「ハロイン祭り」を開催して地域社会の人々との交流を大切にされています。

〈ハロインと諸聖徒日〉
 アメリカでは「ハロイン」を迎えると、若者たちがお化けや魔女の覆面や奇妙な衣装を身にまとって家々を訪問、お菓子などをもらって楽しく過ごします。  ハロインは、英国の先住民族ケルト人の古い伝承から生まれたものです。ケルトの暦によると10月31日は大晦日に当たり、この日には必ず怪しげなお化けや魔女たちが飛び交って人々を困らせると言い伝えられてきました。    やがてキリスト教が英国に伝わると人々は聖人たちがこれらの悪者たちを退治してくれると信じるようになり、諸聖徒日(11月1日)の前日にこのようなお祭りが行われるようになったのです。ちなみに「ハロイン」とはHallow(聖徒)と Eve(前日)の二つの単語が合体して出来た言葉です。

〈逝去者記念日〉
 現在、聖公会では11月1日に諸聖徒日、11月2日に諸魂日を守りますが、このような祝日はいつから始まったのでしょうか。 教会は誕生以来、様々な迫害に会い、多くの信徒の血が流されてきましたが、4世紀になるとローマ帝国に勝利して迫害の時代は終わりました。それ以降、教会では聖徒たちや殉教者に対する感謝の気持ちが高まり、各地の教会で殉教者を記念する祝日が守られるようになりました。AD610年にローマ教会では5月13日を全ての殉教者と諸聖徒及び聖マリアを記念する祝日と定めましたが、AD835年にこの祝日を11月1日に移し「諸聖徒日」と名付けて今日に至っています。また諸魂日は逝去された一般信徒を記念する祝日で10世紀頃にフランスのクリュニュー修道院から始められたと云われています。

〈神の御前に立つ〉
 『人々に憎まれる時、また、人の子のために追い出され、ののしられ、汚名を着せられる時、あなたがたは幸いである。』 (ルカによる福音書第6章22節)イエスに従う人は必ずこの世から何らかの迫害を受けます。不完全で歪んだこの世界は、永遠で、真実なイエスを排除しようとするからです。だから弟子たちも排除されるのですが、何故そんな彼らが幸いなのでしょうか。それは、彼らがイエスに従って歩む時、そこに起こる様々な苦しみや悲しみを天の父なる神は見ておられ、神自ら弟子たちを慰め励まして下さるからです。ところが、人間は苦しく悲しい時、周囲の人々から同情をもらって自らを慰めようとします。それが『既に慰めを受けている。』ことなのです。しかし、殉教者たちは、復活のイエスの御前に堅く立って、復活のイエスに語りかけ、イエスからのみ慰めを受け励まされるのです。そして最後までイエスに従い切った人々でした。神は彼らに永遠の生命に至る必要な物を全て与え、復活のイエスを通して神の国を与えられるのです。これが「天にある大きな報酬」です。 果たして私たちは復活のイエスの御前にしっかりと立っているのでしょうか。         


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